インタビュー
社長インタビュー【出所:四銀経営情報2018年5月号「飛耳長目」より転載】
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interview04-3_02.jpg 1921(大正10)年6月創業の株式会社乾仏具店は、高知県高知市に本店を置き、宗教用具全般(仏壇・仏具・神具・寺院用具等)の販売および卸を手掛け、「価値ある商品心の販売」をモットーとした営業姿勢を貫くとともに、関連企業を設立してソーラーパネル発電事業や、保険事業、不動産管理事業など、幅広く事業を展開している。
また、1996(平成8)年には、当社しか作れない商品を前面に打ち出すために、創作仏壇製作所乾「匠」工房徳島工場を開設し、オリジナルの「価値ある商品」を提供し続けている。さらに当社は、今年、上杉謙信の祈願所として有名な高野山清浄心院に荘厳具を納めるなど、一層活動の場を拡げている。
今回は、当社の代表取締役社長乾貴昭氏に、創業からの歩みや、強み、現状の課題や今後の展望などについてお伺いした。
創業以来誠実な商売を徹底して継続
御社の創業からの歩みについてお聞かせください。
interview04-3_03.jpg 社長:当社は1921(大正10)年に、曽祖父である乾梅吉が、高知市洞ヶ島町の薫的さまの門前で、お遍路用品などの仏具を販売する店として、「乾梅吉商店」を創業したのが始まりです。以来、二代目一重、三代目良臣、そして私と受け継いできました。
専門店として仏壇を取り扱ったのは祖父、一重です。一重は高校卒業後、大阪の日本郵船に入社しましたが、1938(昭和13)年に家業を継ぐために帰高しました。一重は6人兄弟の長男だったこともあり、日本郵船にいた間高知に仕送りを続けていましたが、母はそのお金には手を付けず貯金し、一重が帰高した際に手渡しました。
一重はこのお金を元に京都や大阪から仏壇を仕入れ、これを契機に、仏具の取り扱いが始まりました。

そして、一重は私たちが毎日朝礼で唱和している以下のような社訓を定めました。
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【社訓】
誓の言葉
一、より誠實に
一、より正確に
一、より確認を
誓って本日も努力します

この社訓は、商売哲学として全社員の心に日々、刻まれています。一重は、「良い商人」になることを目指していました。高校時代には将来の夢として、「良い商人」になることと答えています。「良い商人」とは、将に「より誠実に、より正確に、より確認を」を実践する者のことで、この精神を大事にしていると、周囲から認められ、信用が生まれるとともに、信頼を得られる「良い商人」になることができるという考え方です。
interview04-3_05.jpg その他、物をとても大事にしていました。当時、京都や大阪の仕入れ先から送られてくる仏壇は、木枠で厳重に梱包されていたのですが、店の前で開梱し、梱包に使われている釘を一本、一本丁寧に抜いて、真っ直ぐに伸ばして再利用していました。当時私は、開梱後の木枠周辺に釘が残っていないか、磁石を使って確認していました。
1973(昭和48)年には、有限会社乾仏具店に改組し、1980(昭和55)年に安芸店、1986(昭和61)年に土佐道路店を開設しました。そして、1990(平成2)年に知寄町店、1994(平成6)年に松山店、1996(平成8)年に創作仏壇製作所乾「匠」工房徳島工場を開設しました。その後、1997(平成9)年に松山に2店舗目、2000(平成12)年に中村店を開設し、2016(平成28)年に現在の株式会社に組織変更しました。

私は4代目で、東京の大学を卒業後、京都の仏具店に勤務し、その後、27歳の時に帰高して当社に入社、3年後の1996(平成8)年に社長に就任しました。

仏壇の由来などについて教えてください。
社長:祖父から聞いたのですが、現在の仏壇の形ができたのは江戸時代の初期だそうです。キリシタン弾圧と同時期に、幕府が民衆の所属寺を決めたことから、家に仏壇を置くようになりました。それまでは、お床に掛け軸をかけ、花を供えたり、香を焚いていたといいます。
また祖父は、「仏壇は家の中心に置かれ、ご本尊やご先祖を祭るだけでなく、自身の生き方を見つめ直し、自然や周りの人に生かされていることを感謝する場所。信仰心の厚い香川県では家を建てるときに、購入する仏壇の予算を別に取っておくほどだ。」と言っていました。香川県では、普通、建築費の1割程度を充てるといいますから、何百万円もの仏壇になります。香川県人の信仰心の厚さを物語っていると思います。
その他、祖父は仕事柄、電話でお布施の相場を尋ねられることが多く、「お寺への寄付のように思っている人も多いが、先祖に差し上げるものであるから、出来るだけ先祖への気持ちを込めてほしい。もともと、お布施とは感謝の気持ちを布で差し上げていたことから、僧侶がそれで袈裟を作ったことに由来する。」と答えていたそうです。 interview04-3_06.jpg

30歳の若さで社長になられたとお聞きしましたが、若くして社長になられたので、ご苦労されたのではないですか。
社長:とにかく周囲の諸先輩の方たちに、盛り上げていただいて、色々なことをやらせていただくとともに、任せていただきました。例えば、私は京都の仏具店に勤務していた頃に、寺院関係の勉強をし、それなりの知識を身に付けていましたので、寺院関係の勉強会をすることを提案し、取り上げてもらいました。
また、仏壇の中の仏具は当時サービスで提供していました。しかし、その仏具自体も職人が気持ちを込めて作ったものですし、当然高価なものもありますので、きちんとお客様に説明して、代金をいただくべきではないかと提案したところ、代金をいただくようになりました。
その他、寺院向けの営業をやってみたいと相談すると、寺院部を立ち上げてくれたりもしました。これも偏に、暖かく見守り、理解を示してくれた諸先輩のお陰であると、心から感謝しています。
そして、私は、これらの経験をとおして失敗しても、諦めずにやり続ければ、必ずいつかは成功に繋がるということを学び、非常に貴重な経験をすることができたと思っています。

人材育成について教えてください。
社長:三つお話したいと思います。
一つ目は、セミナーの活用です。社員教育については、定期的に外部セミナーを受講しています。学んだことを持ち帰って勉強会を開催し、実践面で活かしています。
基本的に、お客様は担当者を選ぶことはできませんので、誰が担当になってもお客様に失礼のないよう、専門的な知識を正確に身に付けることが大切であると考えています。
二つ目は、情報共有の徹底です。会社は日々お客様と接するので、様々な問題が出てきます。人間は失敗をしますし、人間がする以上、問題は起きます。しかし、問題が起きるのが問題ではなく、その発生した問題をどのように解決するかが問題です。実際問題が生じた際には、生じた問題を「ラッキーコール」と捉え、全員で共有し、解決しています。具体的には、ミーティングを開き、お客様からお叱りを受けたこと、接客で失敗したことなどを発表し合っています。一方でこのミーティングでは、お互いのモチベーションの向上につなげるべく、喜んでいただいたこと、お客様をご紹介していただいたことなども発表し合っています。
できるだけ、問題があったことを発表してほしいですが、あまりオープンになっていないのが実情で、そこをうまく吸い上げていくのが私の務めであると考えています。
そのためには、日頃のコミュニケーションがとても大切です。私自身の過去の失敗についてオープンに話すなどして、話しやすい雰囲気の醸成に努めています。
interview04-3_07.jpg 三つ目は、経営理念の中にありますが、商品一つ一つに真心を込めて取扱い、販売するということの徹底です。私どもが扱う商品は、お客様が手を合わせるものですので、気持ちを込めて両手で扱うようにしています。
interview04-3_08.jpg 名刺の一番上にも「価値ある商品心の販売」と書いてあるとおり、質の高い、価値ある商品の販売は勿論のことですが、心のこもった接客を全社員に徹底しています。最近の仏壇店では半額セールや5割・6割引きのお店もよく見かけますが、弊社では先代より受け継いで来ました『価値ある商品心の販売』をモットーに「お客様にいくらの商品を買ってもらったかではなく、それ以上にお客様がどのような気持ちでお帰り下さったか」を社員一人一人が考え努力しております。
当社ならではのオリジナル商品を製作
御社の強みについてお聞かせください。
interview04-3_09.jpg interview04-3_10.jpg 社長:最近は、競争が激しくなってきています。中国やベトナムなどで作られた安価な仏壇が出回っています。その一方で、デンマークやイタリアで作られる、伝統技術に培われた繊細で高価な仏壇もあり、当社も取扱いをしています。当社では安さではなく、品質にこだわっています。
幸い私どもは、徳島に製造工場を持っており、オリジナルなものを作ることができるのが強みで、職人が心を込めて作り上げた仏壇の数々を揃えています。位牌に施す蒔絵などについては、お客様のご要望をお聞きしてオリジナルなものに仕上げています。
また、私どもは、高知市内に3店舗、安芸市に1店舗、四万十市に1店舗を構えています。安芸市と四万十市への出店理由は、高知県の西と東では祭りごとのしきたりが違っており、そこをきちんと理解したうえで、地域に密着した営業ができる体制を構築するためです。
ネットを見ただけでは、わからないところにまで踏み込んで、お客様にしっかりとアドバイス、説明ができることが私どもの強みだと思っています。
愛媛県にも、中予の松山に店舗を出しておりますが、同じように地域に密着する形で営業をしています。

地域に貢献する活動も行なわれていますね。
10年ぐらい前より、お釈迦様の誕生を祝う花祭りが行われる時期に、高知や松山の寺院が関係している幼稚園や保育園の子供たちにお菓子を配っています。子供たちがお釈迦様に対する感謝の気持ちを高めることに、少しでも貢献できればと思い、今後も続けて行きたいと考えています。

御社の課題についてお聞かせください。
社長:最近は、家庭に仏壇を置いて先祖を供養するといった風習があまり行われなくなってきていると言われています。このような状況下で、いかに先祖供養の裾野を広げていくかが課題であると思っています。
私は、仏壇はとても大切なものと考えています。仏壇は家族の心を支え、日々の生活に癒しと潤いを与えてくれます。人は仏壇に手を合わす時にお願いはしても、嘘をつくことはしません。仏壇に手を合わせることで、自分の生き方を見つめ直すことや正直になることができるからです。
高い技術力を活かし、お客様に仏壇の「リメイク」を提案
今後の展望について教えてください。
社長:最近は戸建てからマンションなどへと住まいが変わってきていることから、小型の仏壇や、家具に調和するようデザインされた洋風の仏壇に対するニーズが高まっています。
そこで、当社では、黒檀や紫檀などの高価な素材でできた仏壇をお持ちのお客様に、ご要望に見合うように作り直すという「リメイク」を提案しています。出来上がった仏壇は、世界で一つ、オンリーワンの仏壇となるわけです。例えば、マンションにお住まいのお客様には、マンションの部屋に合うデザインを2〜3提案させていただき、お客様に選んでいただいて、リメイクをしています。先祖から代々受け継がれてきた大切な仏壇を「リメイク」するケースは、特にお客様に 喜んでいただいております。というのは、先祖が大切にしていた仏壇を現状のライフスタイルに見合った形で受け継ぐことができるからです。そういったお客様の立場に立った提案というのが大事であると思っています。ただし、一旦すべてをパーツごとに分けて作り直すわけですから、高い技術力が要求されますので、値段的には、決して安くはありません。それでも、お客様には仏壇の素材を活かしたオンリーワンというところに納得していただいております。その他、仏壇を薬品で洗浄し、傷や汚れを修復する「洗濯」も行っています。
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これからも、乾仏具店でしか作れないオリジナルで、品質の高い、価値ある商品・サービスを提供し続けていきたいと思っています。
また、今、こうして営業ができるのは、先代はじめ社員の地道な努力によるお客様からの信用・信頼があってのことで、心から感謝をしています。今後も、感謝の気持ちを忘れず、地道に一つ一つ積み上げていくことで、受け継がれてきたお客様からの信用・信頼を揺るぎないものとして、しっかりと次の世代へ引き継いでまいります。
本日はありがとうございました。
(当研究所前田和雅)
四国銀行よさこい咲都支店上田支店長より一

interview04-3_12.jpg 1921(大正10)年6月創業の株式会社乾仏具店様は、宗教用具全般(仏壇・仏具・神具・寺院用具等)の販売および卸を手掛け、「価値ある商品心の販売」をモットーとした営業姿勢を貫かれ、近年は関連企業を設立し、ソーラーパネル発電事業や、保険事業、不動産管理事業など幅広く事業を展開されておられます。また、1996(平成8)年には、乾仏具店様しか作れない商品を前面に出した形での創作仏壇製作所乾「匠」工房徳島工場を開設し、オリジナルの「価値ある商品」を提供し続けておられます。
企業訪問では、乾社長様より二代目乾一重社長様が定められた「社訓」や「経営理念」を通じた「良い商人」とは何かをはじめとした商売の真髄について熱く語っていただきました。
特に、社長様ご自身が経営を行うにあたり大切にされている『「価値ある商品心の販売」については、価値ある商品販売を展開していくことは、重要でありますが、それ以上に、心のこもった接客を通じて、お客様に商品を購入していただいた後もどういう気持ちでお帰りいただいたかを深く追求していきたい』、『お客様との間で問題が生じた時に、それを「ラッキーコール」と捉え全員で内容を共有し解決している』、『問題が起きるのが問題でなく、どの様に解決するのかが問題である』と仰っていたことは、強く印象に残っております。
これらは、振り返って我々の現場に置き換えてみますと、「質の高い金融サービス」と「より高次元での顧客満足度の実現」を図っていく上で、必要不可欠であると改めて認識した次第です。 私どもは、乾仏具店様がこれまでのあゆみをもとに、目指される地域に根差した地道な企業活動を通して、益々ご発展されることを心より祈念申し上げます。これからも乾仏具様にとって「頼りになる銀行」となるため、弛まぬ努力をして参る所存です。